刀剣巡礼覚書

日本刀の鑑賞にはまった審神者が、刀を求めて聖地巡礼をしつつ全国を巡った記録を書き連ねたものです。各地の博物館、美術館の情報は当時のものです。

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 香川県立ミュージアムと岡山県立博物館の展示を合わせて行ってきました。もっと時間があったらいろいろ足をのばしたい場所があったのですが、今回はこの二か所がメインです。

《行った場所》
○香川県立ミュージアム
 香川県は2回目ですが高松は初めてです。今回も岡山から電車でしたが、一本で行けるうえにそこまで時間がかからないのでとても便利だなと思います。高松駅は海沿いにあり、電車から降りた瞬間から潮の香を感じました。今回はちょっと離れたところに行くこともあり、レンタルサイクルを利用しました。6時間100円、それ以上でも200円という安さです。
 県立ミュージアムは思っていたよりも刀剣がたくさん展示されていて、さらに解説がわかりやすくてよかったです。目録兼解説シートもとても充実していてすばらしいと思います。3階にある常設展は、入ってすぐの古代の展示のセットが臨場感ありすぎて驚きました。とてもビルの中とは思えないクオリティです。それ以降の時代の展示や出てからの映像ギャラリーなど、映像作品が多く、すべて見ようと思うとかなりの時間がかかると思いました。
主な刀剣
・脇指 無銘 貞宗(名物 切刃貞宗
 再刃されているので刃文がちょっと違和感を感じますが、貞宗とわかる姿をしていました。
・脇指 無銘 青江(名物 ニッカリ青江重要美術品、丸亀市立資料館蔵(香川)
 見るのは2回目ですがやはり好みな形をしています。前回のときより少し印象が変わったので、やはり展示場所によって大きく変わるなということを感じました。
・刀 無銘 伝郷義弘(号 芦葉江香川県指定有形文化財、高松市歴史資料館蔵(香川)

・刀 無銘 則長
・刀 銘 肥前国住近江大掾藤原忠廣
・脇指 銘 長曾禰興里入道乕徹
 直刃すぎて定規で線を引いたようなまっすぐさだなと思いました。
・太刀 銘 真守造 重要文化財
 平安らしい形をしています。切っ先のほうの刃文がとても派手になっていました。
・刀 無銘 景光
 蛙子丁字の刃文でも、一つ一つが小さいとそこまで派手な印象はうけません。
・刀 銘 一竿子忠綱彫同作
 刃文の動きが彫物と調節されて作られているのが、今まで意識したことがなかったのでおもしろいなあと思いました。
・脇指 銘 加賀守藤原包高
・刀 銘 讃州住盈永 寛政九丁己年二月於高松城西丸鍛之 高松市指定有形文化財
・脇指 銘  讃州住盈永 寛政九丁己年八月鍛之 高松市指定有形文化財
・刀 銘 早勝美濃守藤原盛光 讃州丸亀士慰作


○玉藻公園
 元高松城があった場所で現在は櫓や石垣などが残っています。天守があった場所へは、一つの橋を使わないといけない造りになっていて趣がありました。今後天守が再建されたり展示が増えたりすると楽しめそうだなと思いました。

○平家物語歴史館
 駅から少し離れたところにある博物館ですが、おもしろそうだったので行ってきました。ネットで事前に訪れることを伝えておくと200円値引きしてくれます。3時間前に予約しましたが問題ありませんでした。
 とてもコアな施設で、建物の外観からすでに気軽に入りにくい雰囲気を醸し出しています。日本最大のろう人形館ということで、一階で四国出身の偉人を紹介し、二階で平家物語の流れを展示していました。全体的に不気味な雰囲気なのですが、二階にあがってすぐの一の谷の合戦の再現が、とにかく迫力があってすごいです。これを見ただけで入ってみてよかったと思いました。最後の最後に、怖がらせる目的としか思えないろう人形が置かれていました。正直一人で入っていたらゆっくり見てられなかったと思います。


○備前長船刀剣博物館
 前回岡山を訪れたときは時間がなくて断念したので、今回初めて訪れました。思っていたよりも純粋に観光地としてにぎわっていました。刀工の方による鍛えも見学することができました。今まで博物館の展示で工程は何度も学んできましたが、想像以上に迫力があり手間がかかる作業だというのを感じました。音も火花も実際に近くで見ないとまったく理解できないものです。やはりもっと最初の頃に見ておきたかったなと思いました。
 主な刀剣
・太刀 銘 於富士浅間大社宗景勤作 昭和三年十一月吉日影打 献上官幣大社浅間神社
・小太刀 銘 吉房
・刀 無銘 大宮
・太刀 銘 備州長船盛光 応永十二年十月日
・刀 備州長船忠光 文明二年二月日
 茎が短いのは片手で扱うからとあり、とても納得です。まだ全然知らないことがあるなと思いました。
・刀 備前国住長船清光 永禄十三年二月日
・脇指 銘 備前国住長船七兵衛尉祐定作
 蟹爪風の刃文が本当に蟹の爪そっくりで好みな刃文でした。
・刀 備前長船住横山俊左衛門藤原祐包 天王原八幡宮於神前作之 慶応二年八月日 友成五十八代孫
・刀 無銘 伝長守
・脇指 折返銘 備州長船則光
・刀 銘 越前住日向守藤原貞次
・刀 銘 備前国(以下切れ) (切付銘)立袈裟立胴籠都畄倍 唐竹肩興利腰満傳
 籠都畄倍でカゴから水が流れ落ちるように切れたという意味だそうで、切れ味を表す良い方もたくさんあるんだなと思いました。
・太刀 銘 国吉
・脇指 銘 播磨大掾藤原重高 越前住
・脇指 銘 備州長船忠光 永正五年八月日
・刀 明 鍛同作 大宝子月仙(花押)昭和十七年六月日 於濃州関昭和刀禁鍛 以記念作之
          他多数

○岡山県立博物館
 こちらも今回初めて訪れました。そこそこ広さはありますが、展示数はそこまで多くないので全部じっくり見ても意外と早く見終わりました。目録などの紙の資料がとても多く用意されていて、展示してあるものについても詳しく説明されているので親切な設計だなと思いました。刀剣の展示場所にあった備前・備中・美作の刀工系譜画像もわかりやすくて良いなと思っていたので紙でいただけたのはうれしいです。
主な刀剣
・刀 銘 備州長船祐定作 永正十二年二月日
・太刀 銘 則宗 重要文化財
・太刀 無銘 一文字(名物 山鳥毛国宝、個人蔵
 刃文が摩訶不思議すぎてわけがわからないという印象です。思っていたよりもとっちらかっているような感じはうけず、純粋にきれいだなあと思いました。すごいのは分かるけど、常軌を逸しすぎると言葉にできないというような感じです。
・太刀 銘 長光  重要文化財
 これぐらいのちょっと派手な刃文のほうが好みでした。
・太刀 銘 真守
 幅が広くなり、前の三作と比べると時代が変わったのがよく分かりました。
・刀 無銘 長義 個人蔵
・刀 銘 彦兵衛尉祐定・与三左衛門尉祐定 個人蔵
・刀 三原兵衛尉祐定 永禄十二年二月日


《感想》
 今回もとてもたくさんの刀を見ることができました。たくさん見られるのはとてもうれしいのですが、記録はとても全部書き出せないので複雑です。いつも見て感じたことはメモに残しているのですが、備前長船刀剣博物館では数が多かったためかメモも少なめでした。岡山は次は夏に林原美術館が刀剣展示をするそうですね。せっかくなのでまた周りの県に足をのばせたらなと思います。


《今回の一振》
 今回は迷いましたが香川県立ミュージアムの芦葉郷です。郷の刀はそこまで多く見ているわけではないので、これだけ解説が手元にしっかりあって、さらにじっくり見られるのはとても良かったです。今回の展示は刃文の見方についてもあるため、とても見やすくなっているように感じました。個人的には直刃よりこれぐらいの変化がある刃文が好みです。反りが強いため実際よりも長く感じます。また、かなり幅が広めだなと思いました。これだけでも作られた時代が推察できるので楽しいです。

 にっかり青江を見に香川県へ行くついでに、岡山県を回ることにしました。たまたま文化の日の本興寺での数珠丸が展示されるのとかぶっていたのでそちらも寄ることができました。

《行った場所》
○丸亀城・丸亀市資料館
 丸亀駅から商店街を通って丸亀城へ行きました。日曜日だからなのかわかりませんが、商店街はほとんど閉まっていました。比較的きれいな街でお店もあるのに、驚くほど人が少なかったです。閉まったシャッターにきれいな絵を書いてる人は見かけました。まだ一部だけしか描かれていないようだったので、これから増えていくのでしょうか。
 丸亀城は天守に登ってから資料館へ行きました。天守への坂道は急ですが、距離が短いのでまだ楽だと思います。土産物屋にはにっかり青江のグッズが並んでいました。てっきり売り切れた後再販していないと思っていたので、驚きました。天守の中も木造の城らしく急こう配の階段で狭いですが趣があります。にっかりの展示してある資料館は、歴史資料の展示は少なめでしたが、無料で入れるのが良心的でした。展示室は比較的人が多いですが、タイミング良く見ればじっくり見られます。展示の仕方が良いのか、とてもきれいに見えました。
主な刀剣
・脇指 金象嵌銘 羽柴五郎左衛門尉長(名物 ニッカリ青江重要美術品



○備前刀剣博物館
 ずっと気になっていましたが、やっと行くことができました。刀剣の販売がメインで販売しているものは手にとれる場所に置いてあります。10万ぐらいからあり、意外とお手頃価格だなと思いました。買うならこれという気にいったものは、45万ほどの拵つきの刀でした。高価なものなど販売していないものを展示しているようです。展示はメインではないので、見ずらい位置に置いてあったり、解説がないものもありますが、展示数は多かったです。2階では新選組関連の刀を展示していました。店内には大和守安定の刀がいろいろなところに展示されていて多かった気がします。
主な刀剣
・太刀 銘 正恒 重要刀剣
・太刀 銘 国安
・刀 無銘 則重
・刀 無銘 高綱
・脇差 無銘 福岡一文字 重要刀剣
・小太刀 銘 光忠
解説のほとんどが燭台切光忠についてで、隣の写真は生駒光忠だったのでバラバラすぎてちょっと笑ってしまいました。
・短刀 朱銘 行光 本阿弥長織花押
・脇差 銘 津田越前守助広 延宝七年二月日 重要刀剣
・脇差 大和守安定 (金象嵌)万治三年八月五日 弐つ胴切落
          (金象嵌)山野加右衛門尉永久    重要刀剣
・短刀 無銘 左 重要刀剣
・刀 無銘 次吉
              他多数



○後楽園・岡山城
 どちらも行くのは2回目ですが、他の三名園やお城をしっかり見た後では、受けるイメージが変わりました。
 後楽園はそこそこの広さにちょうど良い人出でした。平日だったのもあるのでしょうが、お庭の雰囲気を味わうにはちょうど良かったです。敷地内に田んぼや茶畑があって、妙に生活感があるなと感じました。兼六園はあまり広くないからかいつも人が多いですし、偕楽園はほぼ市民公園と梅林なので他の庭園とは雰囲気が違うと思います。
 岡山城は内部にエレベーターがあり、完全に博物館化していますが、お城の外観がとても好きです。記憶よりも大きくて立派でした。城内の展示量はあまり多くありません。今回行ったときには、企画展で戦国武将の甲冑を展示していました。月見櫓が公開中でしたが、上にあがる階段がとにかく急です。階段というより梯子でした。上は縁側のように張り出していて、昔のままの造りが見られてとてもよかったです。

○備中松山城
 特に予定はしていなかったのですが、月曜日で博物館がまったく開いていないこともあり、観光案内でみかけて行くことにしました。岡山駅から在来線で1時間で行けます。備中松山城は現存する天守があり、現存天守の中で、もっとも標高が高い場所にあります。天空の城として紹介されていて、運が良いと雲海も見られるそうです。今回は時期はちょうど良かったのですが、朝雨が降っていたため、雨が止んで晴れた午後に行きました。岡山駅からの電車の眺めもとても良いです。八合目までは車で行けますが、その先は山登りです。お城までは20分ぐらいですが、かなり足場が悪いので、天気が良いときに行って正解でした。とにかく登っている最中も眺めがよくて気持ちよかったです。天守の中は展示物は少ないですが、当時天守が重要な象徴としての存在だったこと、捨て置かれていたため荒れ果てていたこと、山の上にあるため修復作業がとても大変なことなどがよくわかりました。平成の修復作業については、詳細な映像で学ぶこともできたのでとてもわかりやすかったです。

○倉敷
 刀もゆかりの地としてもあまり関係ありませんが、岡山の観光地といったらはずせない倉敷の美観地区も行ってきました。瓦屋根などをみるのが大好きなので建物を見ているだけで楽しいです。今回は初めて川の船にも乗りました。ゆるい船頭のおじさんの話はおもしろかったです。備前焼も少し興味をもったのでお店に入ってみましたが、思ったより手頃な値段だったのでつい買ってしまいました。

○本興寺
 岡山から新幹線で新神戸まで行き、そこから尼崎まで行き本興寺に行ってきました。事前に調べたところあまり人が多くないとのことでしたが、私が行った夕方は比較的多いときだったのではないかなと思います。宝物殿は小さいですが中はきれいな建物でした。数珠丸が展示されている2階はとてもにぎわっていました。展示は刀が低い位置に置かれていたため、刃文が少し見づらかったのが残念です。手入れもしているというお坊さんの話を聞くことができたのですが、美術品ではなく宗祖の日蓮大聖人の持ち物としての展示なので茎は見せない展示方法だったそうです。最近いろいろな施設から貸出の問い合わせがあるそうですが、神聖なものとして取り扱っているためか、あまり展示に前向きではないようです。正直、展示の仕方で受ける印象が大きく変わるので、もっと良い施設で展示しているのも見たいなと思いました。刀以外の展示では、多くの著名な武将が奉納した禁制が置いてあり興味深かったです。
 お寺の敷地内ではお坊さんをたくさん見かけました。特別な日だからか、みなさんとても親切に声をかけてくださり、展示の説明や道案内をしていただきました。重要文化財の建物である方丈はとてもきれいな襖があり良かったです。お堂からお経をよんでいるのが聞こえてきましたが、聞きなれないお経で不思議なリズムでした。
主な刀剣
・太刀 銘 恒次(号 数珠丸重要文化財
・短刀 無銘(号 長一丸
こちらも日蓮大聖人が所持していたそうです。無銘ですが郷義弘の作ではないかとのこと。切っ先が冠落しだったのと少し長め(29.4cm)だったのでパッと見で脇指かと思いました。


《感想》
 岡山は刀剣関係で行きたい場所が多いのですが、今回月曜日をはさんでいたので、県立博物館や長船刀剣美術館には行けませんでした。林原美術館も刀剣の展示はしていないようだったので、ぜひ機会を見てまた近いうちに岡山の刀剣旅行をしたいです。
 今回の旅行でお城を3つ回ったのですが、調べていてあらためて四国は良いお城が多いなと感じました。今回初めての四国上陸だったので、ぜひ他の3県も行きたいと思います。


《今回の一振》
 今回はにっかり青江です。幅も広くて厚みもあって脇差とは思えない迫力がありました。茎の形や鎺、樋の入り方も好みで、刀剣乱舞に登場したキャラも実物をたくさん見てきましたが、かなり好きな刀だと感じました。銘はものによって銀象嵌銘に見えるものもありますが、きれいな金でした。
 数珠丸は備前作ではないかともいわれていますが、にっかりも倉敷刀剣美術館で見た青江派の刀も直刃の似た雰囲気を感じたのでやっぱり青江派かなと思いました。


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