徳川美術館での刀剣展示が、8月9日までと10日からで展示内容が変わるので、両日を合わせて行くことにしました。それに合わせて伊勢神宮や岐阜にも足を延ばしましたが、長くなるので、愛知編と三重・岐阜編に分けます。

《行った場所》
○熱田神宮
 熱田神宮の宝物館は比較的混雑するため、朝の早い時間のほうがじっくり見られます。前回名古屋を訪れたときは特別展開催中で刀剣の展示はありませんでしたが、今回は図録を持って久しぶりに展示を見に行きました。熱田神宮の刀剣図録はとても細かく造りについて書かれているので勉強になります。
主な刀剣
・短刀 銘 備前国住長船祐定 大永二年八月吉日
・短刀 銘 備州長船光長
・短刀 銘 備州長船倫光 永和二年八月日
・短刀 銘 備州長船忠景 貞治亖年三月日
 備前ものの短刀は意外と見ないのですが、今回はたくさん展示してありました。直刃調のものもあって、備前らしさというのがわかりにくく難しいなと思いました。
・短刀 銘 備□国住介成
 初めて見る刀工の作品ですが、草の倶利伽羅龍が彫られていました。厳島神社でも見ましたが、こちらのほうが細かく彫られていてかなりデザインが違います。

・太刀 銘 備前長船守家
・脇指 銘 備州長船盛光 応永廿一年十月日
・脇指 銘 備前国住長船祐定 享徳三円二月吉日
 菖蒲造りになっています。祐定銘の短刀は直刃だったのですが、こちらは変化のある刃文でした。
・脇指 折返銘 備前国住長船助包
・刀 銘 助光
・刀 銘 則光
 大きな互の目乱れでとても華やかな刃文でした。

・太刀 銘 備前長船兼光 重要文化財
 片落ち互の目の刃文で図録の解説には景光風の作品とありました。この刀と以下の2つは展示位置がガラスから近くてとても見やすいです。
・太刀 銘 宗吉作 重要文化財
 こちらも図録に載っています丁字がとてもきれいな姿でした。
・太刀 銘 長光
 長光にしてはあまり派手ではない丁字模様がとてもきれいで良かったです。



○徳川美術館
 徳川美術館では、7月12日~9月11日まで戦国名刀物語として多くの刀剣を展示しています。8月9日までが前期、10日からが後期となっています。特別展も合わせて今までみたことがなかったもの含め、かなりの数を見ることができました。今回は今までよりもかなり刃文が見やすかったように思いました。以前見たことあったものも、新鮮な気持ちで見ることができました。初めて見たものを中心に書いていきます。

主な刀剣
・太刀 銘 国俊(名物 鳥養国俊重要美術品
 以前見たときは刃文がよくわからなかったのですが、腰元の丁字がわかりやすく変化にとんだ刃文でした。
・小太刀 銘 源左衛門尉信国 応永廿一年二月日(名物 松浦信国
 上り龍と下り龍の彫物が他の普通の倶利伽羅龍とは違うデザインでとてもよかったです。
・刀 銘 村正
 刀身が銀色っぽく光っていてきれいなのもあり新刀のようでした。刃文の皆焼きがかなり大きく広がっていて、刃文というより刀身の模様みたいだなと思いました。
・刀 銘 二王清則
 徳川美術館の新しい刀剣図録はかなりの数を網羅しているのですが、こちらは図録に載っていません。二王派は今まで清綱を一振しか見たことがありませんでした。直刃がきれいです。
・短刀 銘 吉光(名物 包丁藤四郎重要美術品
 吉光の短刀の中ではかなり幅広な姿です。刃文もまっすぐな直刃ではなく少しのたれがある感じでした。
・短刀 無銘 則重
・太刀 銘 光忠 守家造
・刀 無銘 一文字(名物 南泉一文字重要文化財
・刀 金象嵌銘 正宗磨上 本阿弥(花押)(名物 池田正宗重要文化財
 正宗らしい幅が広くてどっしりした姿がよかったです。かなり磨りあげられていそうだなと思いました。
・脇指 無銘
 無銘ですが沸がよくついてて貞宗っぽいなと感じました。
・短刀 無銘 正宗(名物 一庵正宗重要文化財
 こちらもかなり好みな姿です。特に腰元あたりの刃文が好きです。
・短刀 銘 相州住正宗 嘉暦三年八月日(名物 大坂長銘正宗
 再刃されたためか、刃文はあまり正宗らしさを感じませんでした。しかし正宗ではめったにない銘が、作刀時期も一緒に刻まれて存在しているというのはロマンを感じます。
・脇指 無銘 貞宗(名物 物吉貞宗重要文化財
・太刀 銘 長光(名物 津田遠江長光国宝


こちらからは10日に見たものです。
・太刀 銘 左(名物 大左文字
 肌は少し荒くなっていて、飛焼がみられます。江雪左文字と若干似た印象を受けました。
・刀 銘 左文字 吉見頼研上之 永禄九年八月吉日(名物 吉見左文字
 こちらは、かなり皆焼のように鎬まで刃文が広がっています。かなり派手ですがとてもきれいで良いなと思いました。解説にもありましたが、こちらのほうが正宗の作風に近い感じがします。
・刀 無銘 貞宗
 貞宗にしては刃文の焼幅がかなり細くて貞宗らしさは薄いですが、大峰で力強い印象をうけます。帽子のあたりが貞宗らしいなと思いました。

・薙刀直し刀 無銘 伝粟田口吉光(名物 骨喰藤四郎重要文化財、豊国神社蔵(京都)
・脇指 銘 吉光(名物 鯰尾藤四郎
 今回おそらく初めて並んで展示をすることになりました。どちらも3回は見ていますが、合わせて見ると同じ刀工の作品だと思わないぐらい似ていないなと思いました。骨喰は伝吉光作という標記になっていました。前回見たとき刃文をよく見ていなかったのですが、直刃で吉光らしさを感じました。また、ちょうど9日と10日で鯰尾と同じような菖蒲造りの刀をいくつか見たあとだったので、鵜の首造りの骨喰とはかなり違うとわかりました。

・短刀 無銘 志津(名物 戸川志津
・太刀 銘 備前国長船住守家(名物 兵庫守家重要文化財
・太刀 無銘 一文字 重要美術品
・小太刀 銘 吉用 重要美術品
・刀 無銘 郷義弘(名物 五月雨郷重要文化財
・短刀 無銘 貞宗(名物 奈良屋貞宗
・短刀 銘 正宗(名物 不動正宗重要文化財
 正宗銘の中でも信ぴょう性の高い作品だそうです。正宗にしては細身だなと感じたり、短刀で細かい彫物がはいるのはめずらしいなどと思いましたが、他の正宗が無銘なことを考えるとこちらが本当の姿なのかなとも思いました。刃文はとても好みな感じです。
・脇指 銘 本明備州長船兼光 天正□年八月吉日日向守上之 犬山城白帝文庫蔵(愛知)
 兼光の作品で本明とついているのは初めて見たのですがどういう意味なのでしょうか。地鉄がとてもきれいでよかったです。白帝文庫の刀剣は城とまちミュージアムでも見ましたが2振しか展示していなかったので、この他にどのぐらい所持しているのか知りたいと思いました。


《感想》
 今回徳川美術館ではまだ見たことのなかった貞宗や正宗の刀をたくさんみることができたのがとてもよかったです。また、左文字もどちらも初めてみるものだったのですが好みな刀でした。今回の展示の目玉であった骨喰や鯰尾もそうですが、同じ刀工の作品でも同じ短刀だったりすればなんとなくわかりますが、短刀と太刀だったり薙刀だったりするとわからないものも多いので、無銘の作品を極める人たちはすごいなと思いました。今回骨喰が伝吉光の表記でしたが、どの刀工の作品か真偽不明でもロマンが感じられるのでいいなと思います。
 

《今回の一振》
 今回は奈良屋貞宗です。すごく貞宗らしい姿でとても好みな短刀でした。大きめのものが多い貞宗の短刀の中でもかなり大きいほうではないでしょうか。29.4cmで若干反りもあるのでほぼ脇指のような姿です。刃文の焼幅が広いですがおだやかな印象で、地鉄も好みな感じでした。とても良いと思うのですが文化財登録はされていないということで、難しいなと思いました。