刀剣巡礼覚書

日本刀の鑑賞にはまった審神者が、刀を求めて聖地巡礼をしつつ全国を巡った記録を書き連ねたものです。各地の博物館、美術館の情報は当時のものです。

2016年06月

 53年ぶりの公開となった前田藤四郎を見に、約一年ぶりに金沢を訪れました。また、富山に新しくできた森記念秋水美術館もこの機会にぜひ行きたいと思ったので合わせて行ってきました。金沢は今まで行ったことのない場所に行き、富山は初めてだったので街の様子なども新鮮に見られました。北陸新幹線ができるまでは、行くのが大変だった2カ所だけあって、タイミング良く開通してくれたことに感謝です。

《行った場所》
○刀工清光の石碑
 金沢駅からバスに乗り、笠間一丁目というバス停で降りてすぐにあります。住宅街の中ですが、しっかりと見やすい状態で保存されていました。石碑には意外と詳しく来歴について書かれていて、若干読みにくい箇所はありますが文字を読み取ることができました。刀のモニュメントのようなものが上にのっていますが、まるっとしたかわいらしいフォルムに対して、刃文、樋、目釘穴までしっかりとデザインされているのがおもしろかったです。

○石川県立博物館
 昨年から三度目の来館となりました。土曜日でしたが前田藤四郎が展示されている展示室は常に人はいるものの、展示の前にだれもいなくなることはかなりあるのでとてもじっくり観ることができました。展示位置は他の博物館などと比べると若干遠いので、おもわず前のめりになりすぎてガラスに頭をぶつけそうです。また若干高めの位置に展示しているので身長が高めの方のほうが刃文がよくみえそうです。
主な刀剣
・短刀 銘 吉光(名物 前田藤四郎重要文化財

○玉泉園
 兼六園の周辺はとても急こう配な道になっていますが、その地形を利用して作られた庭園です。回遊式の庭園の中にある階段をのぼった先にも、池のある庭園があるというおもしろい造りです。

○21世紀美術館
 建物の中には入っていませんが、敷地内に出入り自由の茶室がつくられていました。とてもきれいでよかったです。

○前田土佐守資料館
 武家屋敷の通り沿いにある施設です。前田利家の次男利政から始まる前田土佐守家を中心とした博物館です。利政は前田藤四郎の命名の由来になった方で、その息子の直之までは所持していたということなので、今回の展示と合わせてこの機会に行っておいてよかったです。
 展示が古文書を中心としたものになっており、現代語訳や解説が充実しているのもありすべてをじっくり見ていたらかなり時間が経っていました。本家との関係性がかなり書かれていて知らなかったことも多かったです。

○富山市郷土博物館(富山城)
 富山駅から路面電車ですぐのところにあります。富山駅は初めて行きましたが、かなりきれいに整備されていました。特に最近になりかなり新しいものもできているようです。歴史を学ぶとよくわかりましたが、路面電車が多く走っているところからも広島に似た感じを受けました。 
 富山城の中は郷土博物館ということで、富山城ができた時代から再建までが紹介されていました。富山の位置から上杉、武田、織田、豊臣、前田など歴史の流れに翻弄されてきた場所だというのがわかりました。火事や震災、空襲などで何度も壊されてきましたが、現在の天守は昭和29年に造られたということで意外と早い時期だったんだなと思いました。

○富山市佐藤記念美術館
 郷土博物館とセットで入館券が販売されていました。今は茶道具を展示していました。解説がなかなか豊富です。美術館の前に回遊式庭園が広がっているのですが、とてもきれいでよかったです。

○森記念秋水美術館
 6月11日にオープンしたばかりです。三階建ての近代的な建物で二階がコレクションの刀剣の展示、三階が細川護煕氏が自ら造った作品と集めた品の展示でした。思っていたよりも観光で来た方も多いようで子供連れもいるぐらいでした。刀剣の展示室内はかなり暗くなっています。目録が刀剣博物館とまったく同じようになっていて違和感がなかったです。展示方法はとても良く、特に刃文が見やすかったです。国ごとの展示になっているのも良かったです。簡単な来歴はのっていましたが、造りについての解説がないのでほしいと思いました。個人的に廊下の絨毯の毛が長いのと椅子の豪華さが気になりました。空調がとても効いて外との気温差が激しかったので、薄着には注意が必要です。
主な刀剣
・刀 銘 来国俊 重要刀剣
 折り返し銘だそうで反対向きに銘がありましたが、はめ込んだ跡がまったく見えなかったです。直刃調がきれいでした。
・刀 金象嵌銘 長谷部国重 特別重要刀剣
 誰の極めかはわかりませんが金象嵌の文字がとてもきれいな字でした。かなり長めに感じましたが作刀時期を考えるとこれぐらいが普通だったのかもしれません。
・短刀 銘 長谷部国重 重要刀剣
・脇指 銘 長谷部国信 重要刀剣
 他の長谷部派の刀と違ってこちらは皆焼じゃなかったように思います。脇指だけれど樋がはいっていたので磨りあげなのかなと思いました。
・太刀 銘 延吉 特別重要刀剣
・短刀 銘 包俊 重要刀剣

・太刀 銘 備前国友成 重要美術品
 平安らしい姿ですが、とにかく細さにおどろきます。切っ先は幅が2cmぐらいしかなさそうでした。長さもあるため、なんだか簡単に折れそうで実戦で使えるのかなと思いました。
・太刀 銘 基近造 重要美術品
・太刀 銘 守家造 重要刀剣
・太刀 銘 雲生 重要刀剣
 きれいな直刃で沸がよく見えました。
・太刀 銘 嘉元二二年五月日 中原国宗 特別重要刀剣
 こちらも沸がよく見えます。展示の仕方か研ぎの影響か、他の施設よりも沸と帽子が観察しやすいです。
・太刀 銘 次家 重要刀剣
・太刀 銘 備前長船盛重 永享三年辛亥八月日 重要刀剣

・脇指 無銘 伝正宗 重要文化財
 磨りあげられたような姿でした。刃文はおだやかな印象です。伝ということは確定ではないにもかかわらず、重要文化財になれるのはすごいなと思います。
・短刀 銘 濃州関住兼定 永正六年二月日
・短刀 銘 村正
・短刀 銘 □正
 どちらの村正の刀も、角ばったかんじののたれで、特徴的だなと思いました。他の村正の刀も見ていたはずですが、今回は刃文がとても見やすいため余計特徴的に感じました。
・短刀 銘 則重 重要刀剣
・刀 無銘 加州真景 重要刀剣
 大峰で南北朝時代らしい姿をしています。そこそこの長さと幅があって樋がないのが、逆にアンバランスな印象を受けました。
・刀 無銘 伝江 (朱銘 郷義□ 鑑定本阿弥長識(花押))重要刀剣
・太刀 銘 宇多国房 重要刀剣
・脇指 銘 辻村越中守藤原高平(花押) 元和九年三月三日 重要刀剣
・刀 銘 越後守包貞 重要刀剣
・刀 銘 住東叡山忍岡辺長曾祢虎入道 寛文拾一年二月吉祥日 重要文化財
・刀 銘 七十二翁 庄司美濃介藤原直胤(花押) 嘉永三戌年二月吉日


《感想》
 金沢に行くということで刀が観られる施設がないか片っ端から探してみましたが、意外と少ないなという印象を受けました。また、重要文化財などに指定されている刀剣類も、個人蔵なものすらほとんどなく富山県の方が多かったです。前田育徳会は東京にあるのでこちらも当てはまらないとなると本当に少ないなと思います。今回白山比咩神社は行きませんでしたが、こちらが所持している刀剣もとても興味があるので、いつか見られたらなと思います。
 富山にできた秋水美術館は、日本刀が好きな人にはとても良い施設ですが、富山観光のついでになんとなく訪れる人には、解説がないので値段が高めなこともあって優しくないかなと思いました。今回行った佐藤記念美術館の茶道具の展示では、解説が充実しているためそこそこ楽しめましたが、見どころなどがわかっていないとただ見て終わってしまい何も知識として残らないので意識して訪れないといけないなと思いました。


《今回の一振》
 今回は前田藤四郎です。地鉄がやわかいしなやかな印象をうけました。色味や形からもがっしりした感じはまったくなく、凛とすんだ風貌です。刃文は見づらかったのですが、切っ先の近くの地鉄が変化しているのを見られました。刀身はまっすぐですが、茎がかなり鎺元から曲がっているので、柄に収めると反りがでそうだなと思いました。
 

 刀剣博物館で特別重要刀剣に新しく指定された刀剣が展示されていたので久しぶりに行ってきました。
また、映画「日本刀~刀剣の世界」をまだ観ていなかったので席が空いていたので急遽行ってきました。

《行った場所》
〇刀剣博物館
 今回は新しく指定されたものの特集だったので、解説がありませんでした。やはり造りの説明がほしいなと思ったのと、普段の刀剣博物館の展示はちょうどよい量の解説があったのだと感じました。今回所蔵者も書かれていませんでしたが、すべて個人蔵というわけではないのでしょうか。
 展示されていたものは、無銘刀が多いですが有名な刀工のものも多くとても勉強になりました。特に印象に残ったものを紹介します。
主な刀剣
・短刀 銘 吉光(名物 鍋島藤四郎
 以前調べたときに行方不明とありましたが、鞘書もされていたのに行方不明というのは、ただ個人が持っていたということでしょうか。重要文化財などに登録されていると個人名や所在地までしっかり登録されるのでそうそう行方知らずにはならないと思いますが、刀剣の所持登録だけではそこまで正確に把握されていないということでしょうか。地鉄がとてもきれいで、吉光らしい小振りな短刀でした。
・刀 無銘 来国行
・刀 (朱書)国俊
・刀 銘 来国俊
・刀 無銘 来国光
 来派の刀が並んで展示をされていたのでそれぞれの刀工の特徴を比べることができました。刃文はかなり違いがあるというのがわかります。個人的には来国俊の刃文が一番来派のイメージでした。来国光まで時代が下ると地鉄が相州っぽいなと思いました。
・薙刀直し刀 無銘 伝正宗
 薙刀直しということで見た目のインパクトがとてもあります。正宗の薙刀は見たことありませんが、こちらも伝なので確定ではないということでしょうか。史料としておもしろい存在だなと思いました。
・刀 無銘 貞宗
 こちらは貞宗だそうですが、あまり貞宗っぽくない刃文だなと思いました。地鉄はそれらしいのでわかりますが、これを見ても貞宗と当てることはなかなか難しそうです。
・脇指 銘 相州住秋広 応安三
 特に帽子の部分の刃文が秋広らしいなと感じました。秋広の刃文はなかなか好みなので見られてよかったです。

・短刀 佐伯則重作 元応元年十一月日
 刃文がかなり広くて刀身の大部分を占めていて変わってるなと感じました。短刀で年季がしっかり入ってるのは貴重だなと思いました。
・太刀 銘 久宗
 古一文字の刀工だそうですが初めて見ました。細身でかなり古い時代に作られていそうです。一文字らしい姿だと思いました。
・短刀 銘 守家
 短刀にしてはあまり見ないめずらしい刃文で印象的でした。
・脇指 銘 備州長船倫光 延文三年二月日
 倫光というと日光二荒山神社にある国宝の大太刀ですが、こちらにも同じように彫物がたくさんありきれいでした。奉納用の刀という印象を受けました。
・刀 無銘 青江
 姿や地鉄の感じがにっかり青江そっくりでした。青江派の刀剣はあまりたくさんは見ていませんが、刃文以外は毎回受ける印象がかなり変わるので、今回は同じ青江派の作というのがしっくりきました。
・短刀 銘 筑州住左
 すごく見たことがあるような気がしましたが、おそらく土浦市立博物館の国宝の行弘の短刀か小夜左文字と似た印象だったのだと思います。特に帽子のあたりが特徴的だなと思いました。
・一竿子粟田口忠綱 雕同作
 忠綱らしくすごく細かい龍の彫物で火を吹いたデザインになっていました。
・刀 銘 繁慶
 地鉄がきれいでのたれの刃文もとても好みな造りです。


《感想》
 解説がないとやはりまだまだ刃文を詳しく言葉で書くこともできないというのがわかりました。今回久しぶりに刀剣博物館に来たら展示とガラスの位置が意外と離れているなと感じました。先日黒川古文化研究所で単眼鏡を借りてみて見ましたが、照明がみやすいだけに今回は欲しいと思いました。刀剣博物館は短刀の展示のときに寝かせる展示の仕方をよくとりますが、距離が近くとても見やすいので良いなと思います。
 見終わって時間がちょうどよかったので、日本橋で映画日本刀を観てきました。有名な刀剣が紹介されるというのに興味を持ちましたが、刀ができるまでを丁寧に映像に残されていたのがとてもよかったです。少し前に備前長船刀剣の里で鍛えを見学したばかりだったのもあり、とてもすんなりと頭に入っていきました。研ぎのようすもここまでじっくり映像で学ぶのは初めてで思わず研ぎ師を目指したくなるような作りでした。博物館の展示越しだったり映像が古いものを映画館のスクリーンで観るのはとても違和感がありもったいないなと思いましたが、テレビで観ればおそらくそこまででもないのでしょう。全体的にとても緊張感のある映像ばかりで、集中して観ていたために見終わった後に少し疲労感がありました。


《今回の一振》
今回は江の作といわれる刀です。伝江なので確実ではないのでしょうが、とてもきれいで良いなと思いました。刃文も江らしさを感じます。

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