刀剣巡礼覚書

日本刀の鑑賞にはまった審神者が、刀を求めて聖地巡礼をしつつ全国を巡った記録を書き連ねたものです。各地の博物館、美術館の情報は当時のものです。

2016年04月

 広島県立美術館で5月29日まで徳川名宝展を開催中です。各地の博物館などの所蔵品を集めた特別展で、今まで行った場所のものもあれば、行きたいと思っていた場所の所蔵品も見ることができました。
 初めて広島に行ったので、今回は行きたかった観光地も見てまわりました。

《行った場所》
○宮島
 昼に行ったときちょうど干潮の時間だったので、大鳥居の近くまで歩いて行くことができました。18時ぐらいのときはかなり潮が満ちていましたが、厳島神社はそこまで海につかってなかったので、うまく設計されているなと思いました。
○弥山
 ロープウェイを乗りついで頂上近くまで行き、そのあとは山登りをしました。登る予定ではなかったので靴はパンプスだったのですが、特に問題なく登りきることができるぐらいの道のりでした。途中の道は景色があまり見えないところが多くそこまでといった印象ですが、登りきった頂上からの景色がとてもすばらしかったです。
○厳島神社・宝物館
 初めて行きましたが、神社というよりも舞台がメインのように感じました。もっと常に水につかってるものかと思っていたので、1日のほとんどの水から出ているというのが意外でした。
 宝物館は、常に刀剣の展示があるようです。国宝や重文のものは出ていなかったのですが、有名な刀工のものが多く、とても良かったです。
主な刀剣
・短刀 銘 国光
 国の字に目釘穴がかぶっていました。元就の重臣である桂元澄が納めたそうです。厚みがあって相州っぽさを感じました。
・短刀 銘 天國
・短刀 銘 相州住綱広
 彫られた省略した倶利伽羅龍(草の倶利伽羅だそうです)がおしゃれでとてもよかったです。
・大太刀 銘 三州高力住長吉作 万治三庚子年三月吉日
 すごく大きくて幅がある刀です。鎺に見慣れない家紋が彫られていて気になりましたが、高力氏の紋の鳩字紋というそうです。
・太刀 銘 末行
 生ぶの茎で、鉄鎺も作刀時期と同じ南北朝から室町当時のもので貴重とのことです。
・太刀 銘 国綱 
 鍛えに京鍛冶らしさを感じることができました。

○広島県立博物館
 開館に合わせて行ってきました。音声ガイドは声優の山下大輝さんです。静岡県出身で徳川ゆかりの地だからというつながりでの音声ガイドだそうです。音声ガイドの長さはまちまちですが、刀剣だけは展示品のほとんどにガイドがついており、さらにとても長くて明らかに他との違いを感じました。展示が若干下のほうにあり刃文が少し見ずらいように思いました。刀剣以外の展示も盛りだくさんで、展示室が広いのもあり、屏風や障子絵などかなり大きな展示品が多かったです。
主な刀剣
・槍 銘 南無八幡大菩薩 徳川ミュージアム蔵(茨城)
 以前羽田空港の美術館で見たものと同じものでした。
・太刀 銘 宗近村上 東京国立博物館蔵(東京)
・太刀 銘 来国光 附黒漆打刀拵 重要美術品、徳川記念財団蔵・東京国立博物館寄託(東京)
 家康の代表する刀剣の一つだそうです。現在は67.8cmだけれど、元々はかなりの長さがあったとのこと。シンプルな拵は家康の特徴的なものだそうで一緒に展示されていました。
・刀 金象嵌銘 正宗 本阿(花押) 本多中務所持(名物 中務正宗) 国宝、文化庁蔵
 展示の目録では名物について書いていませんが、解説では言っていました。中務正宗は桑名正宗ともいうそうですね。磨りあげられてかなり短めだなと思いました。
・刀 金象嵌銘 光忠 本阿(花押) 重要文化財、東京国立博物館蔵
 まだ見たことのなかった光忠の刀ですが、ずいぶん幅が広いなと思いました。刃文がかなり派手で見応えがあってよかったです。
・太刀 銘 筑州住左(名物 江雪左文字国宝、ふくやま美術館寄託(広島)
 昨年九州国立博物館で見ましたが、そのあとも何度か展示していました。去年みたときは刀を見はじめた頃だったのであまり気になりませんでしたが、かなりの長さがあるのだと気づきました。宗三左文字ほどではないですが相州っぽさを少し感じました。


○広島城
 建造物は再建のものもほとんどありませんが、敷地はとても広く平城としてなかなか雰囲気がありました。
 つい最近まで刀剣展をしていたようですが、常設のみでも意外と多くの刀剣が展示されていました。
主な刀剣
・脇差 銘 播磨守輝廣作
 この輝廣作の刀は、脇差2、刀1、短刀1が展示していました。
・脇差 銘 大山住宗重
 こちらは赤羽刀で、ほかにも赤羽刀がいくつか展示していました。
・刀 芸州住藤原兼光 寛文四年甲辰三月日 個人蔵
・刀 丹波守吉道 重要刀剣
・太刀 銘 雲次 重要刀剣
・刀 無銘 伝兼長


○広島平和記念資料館
 広島が初めてなのでこちらも初めて行ってきました。資料館という名のとおり、残ったものをもとに起きた出来事を、経過や結果など淡々と解説していました。感情で訴えてくるような体験記や映像作品と違い、冷静に考えさせるような展示方法だと感じました。展示室が新しくてきれいなのと、室内が明るめの照明だったのも意外でした。来館者は外国の方がほとんどで、とても混雑していて展示がじっくり見られないほどでした。展示品の一部にある体験者の直筆の文字などは訳されていないので、そちらのほうが心にきたので外国の方が読めないのはもったいないなと思いました。昔からこんなに外国の方が多かったのかどうかはわかりませんが、みなさんとても真剣に見ていました。
 

《感想》
 意外と多くの刀剣を見ることができました。厳島神社や県立美術館は解説も充実していたのでよかったです。
2日間とても天気が良く暑いほどでした。広島は繁華街がコンパクトで便利だなと思いました。路面電車は都内やこれまでの旅行で見たものはどれも一両編成なので、二両以上あるのも便利で良いなと思いました。


《今回の一振》
 今回は中務正宗です。広島県立美術館はあまり刃文が見やすいようになっていなかったのですが、中務正宗は見やすかったです。意外と刀身が短く切っ先も長めでかなり磨りあげられているような印象です。

 薬師寺での大倶利伽羅の展示を観に奈良へ行ってきました。どんなに朝早く出ても到着は開館後の時間になってしまうので、逆にのんびりと昼から行くことにしました。どれだけの混乱があるのか心配でしたが、とても楽しかったです。

《行った場所》
○平等院
 約10年ぶりに行ったのでほとんど覚えていませんでした。また、数年前に大規模な改装工事をしたので、ほぼ初めて見る姿でした。入館料のみで宝物館にも入れるのですが、値段の割にとても展示が充実していてよかったです。博物館を見て映像などを見てから鳳凰堂の内部の見学をすると、理解しやすくてよかったです。雲中供養菩薩像がとても見ていておもしろかったです。

○薬師寺
 昼すぎに到着しました。大倶利伽羅など本日限定の4振を展示しているまほろば会館はすぐに入ることができ、出るまでの所要時間は1時間ぐらいでした。思っていたよりもじっくりと見ることができ、とてもよかったです。
 噂の刀剣展・仏教と刀展をしている宝物庫は、進みが遅いのもあり2時間ほど並んで入ることができました。タイミング良く待機列で、大倶利伽羅などの所有者であるブレストシーブの澤口氏の話を聞くことができました。小夜左文字の公開のときに会っていたので、見かけた瞬間まさかと思いました。とてもおもしろいお話を聞くことができてよかったです。
 記録についてはあまりとれなかったので、大まかなものをのせています。一応展示していた順番ですが、多少間違いがあるかもしれません。

主な刀剣
・太刀 銘 吉家 ㈱ブレストシーブ蔵
 短めの刀身で、山城らしい造りだなと思いました。
・太刀 銘 恒次(名物 鄙田青江恒次) ㈱ブレストシーブ蔵
 厚みがあり、比較的反りが小さいです。鎺に紋がはいっていました。数珠丸と同じ刀工作の可能性があるということで、確かに似た印象を受けました。
・太刀 銘 安綱(号 般若丸重要美術品 ㈱ブレストシーブ蔵
 すごく細くさらに長くて明らかに反りが強いです。腰反りでなく、アーチのように反っていて、鞘もどんなものなのか興味をもちました。
・刀 無銘(名物 大倶利伽羅広光重要美術品 ㈱ブレストシーブ蔵
 最初に見た印象は、正宗っぽいというものでした。多少時代が違っていても、やはり正宗の影響が色こくでているものだと感じました。

・刀 勢州桑名住藤原村正 重要刀剣
・太刀 銘 国行 重要刀剣
・太刀 銘 兼光(号 彦根兼光特別重要刀剣
・短刀 銘 国俊 重要刀剣
・太刀 銘 行正 重要美術品
・太刀 銘 安綱
・太刀 銘 正恒 特別重要刀剣
・太刀 銘 豊後国行平 重要刀剣
・太刀 銘 三原正広(号 雲龍正広重要刀剣
・太刀 銘 正宗 重要刀剣
・短刀 銘 左筑州住 重要刀剣
・短刀 銘 左(号 弾正左文字特別重要刀剣
・短刀 銘 村正(号 群千鳥重要刀剣        他多数


○吉野山
 せっかくの桜の時期だったので、桜の名所の吉野へ行ってきました。電車で吉野駅へ行き、そこからバスで吉野山中腹の中千本まで移動し、歩いて下山というルートにしました。若干満開の手前ではありましたが、たくさん桜が咲いていてとてもきれいでした。
 義経や秀吉に関係した寺社が多く、特に竹林院と吉水神社が良かったです。のんびり見ていたつもりはありませんが、4時間があっという間にすぎて帰る時間となってしまいました。


《感想》
 薬師寺は人は多かったのですが、敷地が広いためあまり混雑は感じませんでした。朝のほうが待機列がひどく、刀剣の鑑賞時間もあまり長くなかったようですが、昼にはまったりした雰囲気でした。噂の刀剣展は、2日の入場券を持って入れば後日入れる処置をとってくださったようですが、残念ながら近々奈良には行けなさそうだったので、並んで見てきました。展示量が多く、早めを心がけていても列の進みは遅くなってしまっていました。解説は刀工の説明が中心で、造りなど細かいところにはあまり触れていませんでした。仏教と刀展は展示内容がまとまってわかりやすく、今まで見てきた刀の復習をするような気持ちで見られてよかったです。
 今回所持者である澤口さんから直接お話を聞くことができよかったです。今回のように、中心となっての展示にはあまり前向きではないようでしたが、今後も博物館等へ貸出という形でたくさん見ることができると良いと思います。


《今回の一振》
 今回は大倶利伽羅です。印象としてはまず正宗っぽいと感じたことです。宗三左文字を見たときも正宗っぽいと感じましたが相州伝の雰囲気が好みのようです。切っ先が長く、刃文ののたれは切っ先に近いほうがよく見えました。幅はそこまで広くないので、倶利伽羅龍も思っていたより細い印象です。茎にも目立つ傷のようなものが見えました。鎺には、伊達の紋である竹に雀が彫られていたようですが、若干距離がありよく見えませんでした。
 持ち主の澤口さんがとても良い刀だと話していました。もともととても長い刀で、時代に合わなくなったのに、磨りあげてまで使い続けたのは良い刀の証拠、という話にとても納得しました。いままで磨りあげられたせいで銘がないのは価値が下がりもったいないなと思っていましたが、銘がないほうが良い刀だという考えもあるのだとわかりました。

 桜がかなり咲いてきたこの時期に行ってきました。天気が良い昼間だったので上野駅はものすごい人混みでした。人を避けたいのであれば桜の時期は鶯谷から行ったほうが良いでしょう。博物館内も全体的に人が多かったのですが、刀剣の展示場所だけを見ればいつもよりじっくり見る人が少ないため空いている印象です。

《行った場所》
○東京国立博物館
・直刀 無銘(号 水龍剣重要文化財
 奈良時代に作られた直刀です。直刀は神社の宝物館などでたまに錆びついたものを見かけますが、きれいな状態を見られるのはあまりないのでとても良かったです。鎺の造形がきれいでした。
・太刀 銘 康次 重要文化財
 古青江派の刀工の作品でかなり長い刀です。縮緬肌が特徴ということで、地鉄はまだまだ理解できていないのでとても興味深く見られました。
・太刀 銘 国安
 後鳥羽院の番鍛冶だった国安の貴重な在銘作品らしく、価値のあるのになぜ文化財指定がされていないのかなと少し疑問に思いました。
・太刀 銘 包永 重要文化財 個人蔵
・太刀 銘 吉宗 重要文化財、筑波山神社蔵(茨城県)
・太刀 銘 長光(号 大般若長光国宝
 丁字刃に互の目交じりの刃文がとてもわかりやすいです。以前見た蜂屋長光もですが、全体に対して茎が短めなため、全体的に短い印象をうけます。
・刀 無銘(名物 観世正宗国宝
 正宗の刀らしくとても迫力を感じました。刃文がくっきりと見えすぎて逆に違和感を感じるぐらいです。鎺の梅(桜?)の彫物がとてもきれいでした。地鉄にうずまき状のものが見られました。以前このうずまきができたものはあまり良くないと聞いたことがあるのですが、あいまいです。
・刀 無銘 郷義弘 重要美術品
 以外と見る機会が少ない郷の作品です。のたれの刃文ですが不規則でどこを見てもおもしろいと思いました。
・太刀 銘 備中住守次作 延文二年十二月日 重要文化財
 かなり長く迫力もあり、磨りあげられていない南北朝の刀というのがよくわかりました。茎がかなりカーブしているのが特徴的です。
・脇指 銘 南都住金房兵衛尉政次 天正十八年八月吉日
 皆焼の刃文でとても派手です。
・刀 銘 上総介藤原金重 寛文八月十一月吉日 個人蔵 
 数珠刃風の互の目とありました。写真が禁止だったのが残念ですが確かに数珠っぽいと思いました。
・刀 銘 川部儀八郎藤原正秀 (花押)寛政十年二月廿九日

・太刀 銘 弘 重要文化財
 弘はあまり聞かない名前ですが、一文字派の刀工と考えられているそうです。反りがかなり強くみえます。
・太刀 銘 雲生
 こちらも備前の刀工である雲類の作品です。きれいに銘がのこっていて雲という字もよく見えます。小さくて丸っこくかわいらしい銘だなと思いました。
・短刀 銘 備州長船住兼光 重要文化財
 島根県の津和野藩亀井家が鳥取県にある大神山神社に奉納した刀だそうです。


《感想》
 東京国立博物館は、刃文がとても見やすく研がれていて、解説に刃文や地鉄のことをのせているのでとても勉強になります。さらに一部を除いて写真にも残せるということで、うまく撮れれば後から解説と写真を見比べることもできます。刀剣鑑賞初心者が気軽に訪れて勉強するにはもってこいだなと思います。
 昨年の29日に初めて刀剣を見に博物館を訪れ、ちょうど一年が経ちました。東京国立博物館はこの一年で数えられないほど訪れましたが、今年も年間パスポートを使い気軽に訪れ勉強したいと思います。


《今回の一振》
 今回は手掻派の包永の刀です。
佩表が細直刃、佩裏が乱刃で展示で見られたのは乱刃でした。裏ものぞいてみましたが、光が当たらないため刃文はほとんど見られませんでした。包永の銘があり、徳川ミュージアムの児手柏とほぼ同じ位置でした。

児手柏
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今回展示している太刀
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児手柏は刃文の記録が残されていないそうですが、表裏の刃文が違うのも同じなので、児手柏が燃えていなかったらこのような姿だったのかなと思いました。反り方がかなり違うのでそこも興味深いです。

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