刀剣巡礼覚書

日本刀の鑑賞にはまった審神者が、刀を求めて聖地巡礼をしつつ全国を巡った記録を書き連ねたものです。各地の博物館、美術館の情報は当時のものです。

2016年01月

 この時期恒例の福岡市博物館でのへし切長谷部展示に行ってきました。毎年のことではありますが、1月のひと月しか展示しないというのは、他の国宝と比較しても短いなと思いました。前回江雪左文字を見に福岡に行ったときに福岡観光はしたので、今回は福岡市博物館のみです。

《行った場所》
○福岡市博物館
 5月以来2回目の訪問です。前回訪れたときは、天気が悪かったのもあり、人がほとんどおらず博物館周辺も建物内も少し寂しい印象でしたが、今回一転とても活気がありました。今回は写真撮影も可ということで、展示を見る列の進みはゆっくりでしたが、人数はそこまででもないように感じました。ちょうど学芸員さんの話が始まったときだったので聞くことができましたが、日本号の実物大ポスターが本当に大きくて笑ってしまいました。広い展示室内でも相当な大きさだったので、部屋に飾るのは難しそうです。展示の写真を撮るのに皆さんしゃがんだり、止まったりするので列の後ろからでも比較的よく見えました。あらためて京都国立博物館での刀剣展示の列は後ろから全然見えないほどぎちぎちに詰めていたんだなと実感しました。

主な刀剣
・槍 無銘(名物 日本号
・刀 金象嵌銘 長谷部国重本阿 黒田筑前守(名物 圧切長谷部国宝


《感想》
 今回施設内が入口あたりから展示室内まで、全体的にお祭りムードがただよっていました。学芸員の方も見に来ていた方も一様に楽しんでいる雰囲気でした。昨年の展示のときは、展示されていて見に行った人もいるという情報を見たぐらいで、まだそこまで盛り上がった雰囲気ではなかったので、本当に待望の展示だったのだなと思いました。特に施設の関係者方がとてもフランクで明るかったのが印象的です。堅苦しくなかったためか、展示室が全体的にざわついていましたが、あまり気になりませんでした。来月は日光一文字を見にまた訪れるので楽しみです。


《今回の一振》
今回はへし切長谷部です。かなり反りが少なくて意外でした。刃文をもっと細かく撮りたかったのですが難しかったです。皆焼の刃文はかなり難しいそうですが、難しいならなぜこのような刃文にしようとしたのかなと少し思いました。特徴的でおもしろいですが、個人的にはきれいさとはちょっと違うなと感じました。
 
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今までの博物館でも皆焼は少ししか見ていないので、参考になる写真を探しましたが、今まで見た皆焼で一番すごかったのは越前康継のこれかなと思います。
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 3月27日まで、刃文特集の展示を行っています。多少の混雑を避けるために、平日の夕方、閉館前に行ってきました。来場者はそこそこいましたが、ゆっくり見ていられるぐらいでした。閉館時間が早いので、15時ぐらいには着いておいたほうが良いと思います。
 今回は、通常の目録の他に、一部の刀剣の押型が載ったリーフレットも配られていました。展示されている刀と比べて見ると、刃文がとてもわかりやすく勉強になります。

《行った場所》
○刀剣博物館
主な刀剣
・太刀 銘 国行(号 明石国行) 国宝
 明石国行と言われる来派の太刀です。刀剣博物館の目録に号は載っていませんが、展示の解説に明石松平家伝来と書かれていました。
・刀 無銘 行光 特別重要刀剣
 相州らしい地鉄の黒っぽさと厚みだと思いました。
・薙刀直し脇指 銘 真利 重要美術品
 直刃に逆足があるとのことで、押型にも刃文が載っています。逆足は腰元のあたりがわかりやすかったです。
・刀 無銘 青江
 こちらも逆刃がありますが、全体的になっていてわかりやすいです。
・短刀 銘 近江大掾藤原忠広 重要刀剣
 短刀の短い刀身にこれでもかと細かく倶利伽羅龍が彫られていて、すごくきれいでした。

・脇指 銘 長曽祢興里虎徹入道 寛文元年霜月廿五日 
 金象嵌 山野加右衛門六十四歳永久 花押 腋毛貳ツ胴度々三ツ胴裁断
 銘に書いてあることがすごいのと、峰がすごく大きくてびっくりです。
・刀 金象嵌銘 助真
 派手な丁子刃ですが、幅広でよけいに派手で目立つ刃文でした。
・刀 銘 長幸於摂津国作之 以幡州完栗鋼鉄作之
 丁子は丸っこいイメージしかなかったのですが、こちらはすごくトゲトゲとした丁子です。

・刀 銘 津田越前守助広 寛文七年八月日
 初めて見るぐらいすごく大きなのたれでした。
・脇指 無銘 伝正宗 特別重要刀剣
 なんとなくの印象ですが、三井記念美術館で見た日向正宗に似てるなと思いました。
・脇指 銘 大和州住人九郎三郎重国居 駿河州後於紀伊州明光山作之 
 羽掃為都筑久太夫氏勝作之 元和八年戌八月吉日
 龍の彫物がすごいです。
・刀 津田越前守助広 延宝九年八月日
 すごく助広らしい濤瀾刃が見られました。
                              他多数


《感想》
 今回は刃文に着目した展示内容と展示方法だったので、刃文が見やすく展示されていたと思います。研ぎ方について順を追って説明している展示では、仕上げ研ぎをしない状態の刃文もありました。確かに仕上げ研ぎまでしないで展示している博物館や美術館もある気がします。少し見ずらいと思ってしまいますが、それも自然で良いのかなと思いました。研ぎの段階によって全然刃文の見え方が違うということがわかりました。


《今回の一振》
 今回は、国宝でもある明石国行です。薄い印象を受けるのが来派っぽいなと思いました。国行の刀は以前も見たことがありますが、博物館でよく見かける来派は国俊と国光なので少し珍しい気がします。三鈷剣の彫物がきれいで、かなり反りが強い印象をうけました。

 だいぶ前になりますが、京博の特集陳列―刀剣を楽しむ―に行ってきました。彦根城博物館でも、刀剣展示を行っていたので、合わせて行ってきました。今回観光のメインは彦根で、京都は京博のみになります。

《行った場所》
○彦根城
 初めて行きました。彦根駅で自転車を借りて周ったのでとても楽でした。周辺は平坦ですが、天守は小高い丘の上に建っています。意外と坂が急なので、距離は短いですが登ったら疲れてしまいました。木造の現存天守で、あまり大きくはありません。犬山城より少し大きいくらいでしょうか。鉄砲や弓で攻撃するために使われる狭間がずいぶん多いなと感じました。城内の解説や展示は少なめです。
 天守に行ったあとは、彦根のマスコットキャラクターひこにゃんのパフォーマンスを見ました。とてもゆるくて思わず笑ってしまいました。

○彦根城博物館
 井伊直弼の甲冑と刀剣展を開催していました。井伊家は600ほどあった刀剣を、関東大震災でほとんど失ってしまったそうです。今回博物館内には、特集展示と常設展示合わせて7振の刀が展示されていました。館内は写真撮影可能なのですが、照明の関係からか展示位置の関係からか、妙に撮りにくかったです。博物館の敷地内には庭園もあり、とてもきれいでした。

主な刀剣
・刀 銘 粟田口一竿子忠綱 正徳三年二月吉日
 銘も刃文もきれいに見られて、濤瀾刃がとてもわかりやすかったです。新刀なので反りが全然なく直刀のようでした。
・脇指 銘 長曾根興里入道虎徹
 こちらも銘がよく見えました。新刀は茎がきれいに残っているので、銘がとても読みやすいので助かります。
・脇指 銘 長曾根興里入道虎徹
・刀 無銘

・太刀 銘 正恒
 細長く、刃文はきれいな直刃でした。
・刀 無銘 伝保昌貞宗
 大磨上げ無銘とのことですが、そこそこ長さがあるので、磨上げ前はかなりの長さだったのでしょうか。
・脇指 額銘 尉恒次
銘がとても見やすくきれいに残っています。磨上げられているからか、アンバランスな印象をうけました。


○玄宮園・楽々園
 彦根藩の下屋敷で、玄宮園は回遊式庭園になっています。池がかなり大きく、きれいな橋がたくさんかかっていました。隣の楽々園は現在改修工事中で中には入れなかったのですが、外から見られる建物の内装がとてもきれいでした。

○埋木舎
 井伊直弼が藩主になるまでの間に過ごした家だそうです。屋内には入れず、庭もあまり広くない普通の住宅といった規模ですが、所せましと展示がしてあり、見応えはありました。大河ドラマでよく使われる場所だそうで、大河ドラマについての解説も多かったです。

○龍潭寺
 彦根駅から少し離れたところにあるお寺です。井伊家が佐和山城主だったときに深くかかわりがあったそうです。石田三成ゆかりの地でもあり、銅像が建っていたり、展示物もたくさんありました。夕方に行ったので、うす暗さや人気のなさもありとても入りにくい雰囲気だったのですが、中の枯山水のお庭がとてもきれいで良かったです。昔は寮としても使われていたらしく、どことなくそんな雰囲気を感じられました。
 三成に関する展示の中に、石田正宗と石田貞宗が写真付きで紹介されていました。写真は文化財指定でよく見られる白黒の写真でしたが、所蔵が個人名だったので、おそらく東京国立博物館に寄贈される前に書かれたもののようです。



○京都国立博物館
 今回の旅行のメインです。8時頃に京都駅からバスにのっていきました。意外とバスが混雑してなかったのですぐに京博に着きました。公開が始まって最初の日曜日だったので心配でしたが、すでに並んでいたのは30人ぐらいでした。寒さも心配でしたが、並ぶ場所は日がよく当たるので天気が良ければ問題ありません。9時ぐらいまではそこまで人が増えなかったように思います。
 チケットは年パスがあるので買う時間が省略でき、そこで順番が半分ぐらい前になりました。さらに前に並んでいた人の半分ぐらいが、音声ガイドを後回しにして展示室へ行ったので、音声ガイドは2番目にもらえました。そのため、刀剣の展示室は、ほぼ待ち時間なしで見ることができました。


主な刀剣

・薙刀直し刀 無銘(名物 骨喰藤四郎重要文化財、豊国神社蔵(京都)
 見るのは3度目になるので感想は割愛です。
・太刀 銘 安家 国宝
 すごく細身の印象です。全体的に銀色っぽく見えました。
・太刀 銘 貞綱 個人蔵
・太刀 銘 有綱 個人蔵
 木曽義仲が巴御前を手助けしたときに譲られたものという記録が残っているとのことです。昔の伝来が残っている刀は貴重ですね。幅広い刀だなと思いました。
・短刀 無銘(名物 上部當麻重要美術品、個人蔵
・剣 無銘
・太刀 菊御作 重要文化財
 鎺の部分に菊が彫られているとのことですが、よくわかりませんでした。
・太刀 銘 □前国則宗(名物 二ツ銘則宗重要文化財、愛宕神社蔵(愛知)
・太刀 銘 則国 国宝
 すごく細長かったです。

・短刀 銘 吉光(名物 秋田藤四郎重要文化財、個人蔵
 とても細くて小さい印象をうけました。吉光の短刀はたくさん見てきましたが、ここまで小さかったかなと思いました。剣が彫られているのは他の刀と似てるなと思いました。目釘穴が埋まっているのも含めて4つあるのが特徴あって良いと思います。
・短刀 銘 国吉 個人蔵
 こちらもとても小さくて細い印象をうけました。
・刀 金象嵌銘 永禄三年五月十九日義元討捕刻彼所持刀 織田尾張守信長(名物 義元左文字重要文化、建勲神社蔵(京都)
 写真でみるのと実物を見るのでは、全然印象が変わるということがわかりました。
・太刀 銘 物部吉貞 個人蔵
 とても長いです。そのわりには茎が短めな印象です。
・刀 銘 吉行
 坂本龍馬が佩刀していたという刀です。とてもまっすぐでほとんど反りがないなと思いました。
・刀 銘 粟田口近江守忠綱 個人蔵
・刀 銘 長曾根虎徹入道興里
・刀 銘 長曾根興里入道乕徹 重要文化財、個人蔵
・太刀 銘 □忠(名物 膝丸・薄緑重要文化財、大覚寺蔵(京都)
 長く幅広い印象です。反りがかなりあるので古い刀なのだなと感じました。鉄鎺の影響で銘の上の文字がつぶれて読めなくなっているのが残念です。
・太刀 銘 国綱(名物 髭切・鬼切重要文化財、北野天満宮蔵(京都)
 10月に北野天満宮で見ましたが、膝丸と比べると細長い印象をうけました。



《感想》
 京都国立博物館は、外での待機列以外では待たずに見ることができてよかったです。人が多いのもありますが、待ち時間が長くなってしまうのは、展示の解説が多いのが一番影響しているかなと思いました。刀工、造り、伝来について細かく書いてあり、東京国立博物館の5倍10倍の文字量があります。私が展示室に入ったときは、先頭の人が半分ぐらいまでいったところでしたが、やはり進みは遅かったです。解説を読み終わらないうちに、前の人との距離が開いてしまい、詰めないといけない空気がありました。夕方がどの程度混んでるかわかりませんが、朝の半端な時間に行くより、後ろに人が少ない遅い時間のほうがいいかなと思いました。



《今回の一振》
 今回は刀をたくさん見ましたが、一番印象に残っているのは、義元左文字です。見た瞬間、すごく正宗っぽいと思いました。左文字は正宗十哲の一人なので影響がみえて当たり前なのかもしれないですが、こんなに正宗の作風を感じるとは思いませんでした。地鉄と樋がすごく好みです。磨上げられているからかなりアンバランスな印象をうけますが、写真で見るのとは違いとても迫力があります。こちらの記事でとりあげた、籠手切正宗と似た雰囲気を感じました。

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