刀剣巡礼覚書

日本刀の鑑賞にはまった審神者が、刀を求めて聖地巡礼をしつつ全国を巡った記録を書き連ねたものです。各地の博物館、美術館の情報は当時のものです。

2015年11月

 埼玉県にある二振りの国宝の刀剣は、毎年この時期に展示されているそうです。前回特別展を見に行ったときは、レプリカのみの展示だったので、今回は本物を見に行ってきました。

《行った場所》
埼玉県立歴史と民族の博物館
 国宝の刀剣は常設展で展示されています。前回行ったときに、常設展は細かく見ましたが、ところどころ展示替えされていました。国宝展示に合わせてか、企画展示室では、埼玉県の名刀展として他にも刀が展示されていました。資料室の本棚には古い図録がたくさん置いてあります。前回来たときも読み漁ったのですが、今回もいろいろと読んできました。40年ほど前の図録でも、現在とまったく変わらない姿の写真がのっていることが、当たり前なのですが改めてすごいなと感じました。初めて写真に撮られて記録に残ったのは、いつ頃なのでしょうか。白黒の写真のみの図録や書籍も多いですが、やはり刀剣もカラーで見たいなと思いました。

主な刀剣
・短刀 銘 備州長船景光 元享三年三月日(号 謙信景光国宝
・太刀 銘 (表)廣峯山御劔願主武蔵国秩父郡住大河原左衛門尉丹治時基於播磨国完粟郡三方西造進之
      (裏)備前国長船住左兵衛尉景光作者進士三郎景政 嘉暦ニニ年己巳七月日  国宝
いわゆる景光・景政の太刀ですが、銘はすごく長いのですね。きれいな直刃でした。
・太刀 銘 宝寿(写)
前回も展示されていましたが、とにかく大きくて迫力があります。刀身の彫刻が朱色になので、さらに迫力が増します。
・太刀 無銘 伝助真 重要文化財、龍門寺蔵(埼玉)
岩槻藩主大岡忠光の愛刀だそうです。大磨上無銘ですが、確かに一文字らしい刃文でした。
・太刀 銘 備前国住安家作 正和□年二月十八日(号 寒念仏)個人蔵
 寒念仏=寒い時期に山などで念仏を唱える修行 に佩刀していたためこんな名前が付いているそうです。95cmあり、とても長く反りも強いです。光の当たり方のためか、刀身が真っ黒に見えました。
・刀 銘 (巴紋)於東部 藤枝太郎英義作之 
         慶應二寅年八月日
川越藩の刀工の作品です。会心の出来のものに巴紋が彫られたのではないかとのことです。


《感想》
 文化財の国宝指定の基準はよくわかりませんが、今回の刀剣でいえば、人の信仰が現れているところに、価値があるのかなと思いました。展示では、武蔵武士が郷土に寄せる思いがわかる物という紹介でした。伝来についても、一応判明はしていますが特に派手でもありません。造りにその刀工の特徴がよく現れていて、年代まで刻まれているというのが価値のあるものなのかなとも思います。
 文化財登録は、されているものは良いものなのだとわかるし、国宝指定されていたら、あまり興味のないものでも見ておきたいという気になります。そればかりに注目してみるのはもったいない気がしますが、登録されているおかげで展示を見る機会に恵まれているというのはあると思います。最近は見ることができるだけで幸せなのだととても感じるので、このように毎年定期的に展示してくれるというのはうれしいです。


《今回の一振》
 今回は短刀の謙信景光です。号のとおり上杉謙信が所持していたものです。拵えは以前の展示で見ていましたが、そちらもきれいでした。今回は展示されていないようです。刀身は表に秩父大菩薩が、裏には阿弥陀如来の梵字が彫られているそうです。刃文はとてもくっきりとしていて、見やすかったです。全体的に迫力よりもきれいさが際立って感じられました。鎺にも梵字が彫られていました。刀剣には梵字が多く使われているので、有名なものだけでも覚えたいなと思いました。











 今日から1月23日まで、特別展「三井家伝世の至宝」が開催中です。初日ですがほどよい人出で見やすかったと思います。

《行った場所》
三井記念美術館
 今回の特別展では、他の施設が現在所蔵しているものも展示していましたが、刀剣に関しては現在三井記念美術館が所持しているもののみでした。今回展示していた刀剣の多くは、紀州徳川家から購入したものだそうです。以前、なぜ紀州徳川家には現在美術館などが設立されていないのか調べたことがありましたが、財政難で多くを売りに出したからだそうですね。各地の歴史博物館を見ると、どこの藩主もお金に苦労していましたし、現在も博物館の存続に当主は苦労されていることがわかります。しかし、御三家でもそこまで財政難になるというのには驚きました。
 美術館はビルの中にあり、ワンフロアに収まっていますが意外と広さがあります。展示品はそこまで多くないのでのんびり見て1時間ぐらいでした。茶道具が展示されている第一展示室は内装がとてもおしゃれで、部屋の中を見るのも楽しいです。刀剣以外の展示では、絵巻や屏風、切手コレクションなどが好みでした。また、蒔絵が施された水晶台がとても豪華できれいなのですが、三井炭鉱でとれた鉱石が埋め込まれているそうで、事業の手広さを実感しました。

主な刀剣
・短刀 無銘 正宗(名物 日向正宗国宝
・短刀 無銘 貞宗(名物 徳善院貞宗国宝
・太刀 銘 則宗 重要文化財
 とても細身です。幅のある徳善院貞宗の後に見たから余計にそう感じます。
・太刀 銘 助真 重要文化財
・刀 銘 国広(号 加藤国広重要文化財
 刃文が不規則かつ豪快でとても印象的です。鎺に下がり藤が彫られていました。加藤という姓を考えたら不思議ではありませんが、号の由来となった加藤清正自体は、調べたところ使用していたのは下がり藤以外の家紋だったようです。
・薙刀 銘 一 重要文化財


《感想》
 普段見に行く各地の歴史に根付いた博物館とは違い、個人のコレクションで手に入れた品々なので新鮮でした。佐野美術館や根津美術館なども同じ私立の博物館ですが、刀だけで言っても、これだけ文化財登録された個人のコレクションが見られるのはすごいことだと思います。刀剣は文化財登録されていても、比較的個人が持っている割合は高いそうですね。由緒ある刀も売りに出されたりというのは珍しくないですが、当時からの価値などを考えると、すごい財力を持っていたのだなと実感します。刀の持ち主の移り変わりを調べると、時代の流れと栄枯盛衰がうっすらとわかるのがおもしろいなと思います。しっかりと保管と管理できる人の手に渡ったからこそ、今もきれいな状態で見ることができると思うと、由緒ばかりにとらわれて現在の所蔵についてあれこれ考えるのは勿体ないとな感じました。


《今回の一振》
 今回は日向正宗と徳善院貞宗の二振です。正宗と貞宗の刀が並んで展示されるというのはあまりないと思うので、じっくり比べて見てみました。刃文がどちらもくっきりときれいに見られたので比べやすかったです。確かに刃文は貞宗のほうがゆるやかなでしたが、ほぼ梵字の彫物で貞宗と判断するぐらいしかできそうにもありませんでした。貞宗の短刀は彫物がたくさんあるので、にぎやかな印象をうけます。徳善院貞宗はとにかく大きくて驚きました。隣の日向正宗と比べると幅も長さも倍はあるんじゃないかと思うぐらいの大きさです。大きさも刃文も、隣同士で並んでいたおかげで見比べることができたのでよかったです。


 にっかり青江を見に香川県へ行くついでに、岡山県を回ることにしました。たまたま文化の日の本興寺での数珠丸が展示されるのとかぶっていたのでそちらも寄ることができました。

《行った場所》
○丸亀城・丸亀市資料館
 丸亀駅から商店街を通って丸亀城へ行きました。日曜日だからなのかわかりませんが、商店街はほとんど閉まっていました。比較的きれいな街でお店もあるのに、驚くほど人が少なかったです。閉まったシャッターにきれいな絵を書いてる人は見かけました。まだ一部だけしか描かれていないようだったので、これから増えていくのでしょうか。
 丸亀城は天守に登ってから資料館へ行きました。天守への坂道は急ですが、距離が短いのでまだ楽だと思います。土産物屋にはにっかり青江のグッズが並んでいました。てっきり売り切れた後再販していないと思っていたので、驚きました。天守の中も木造の城らしく急こう配の階段で狭いですが趣があります。にっかりの展示してある資料館は、歴史資料の展示は少なめでしたが、無料で入れるのが良心的でした。展示室は比較的人が多いですが、タイミング良く見ればじっくり見られます。展示の仕方が良いのか、とてもきれいに見えました。
主な刀剣
・脇指 金象嵌銘 羽柴五郎左衛門尉長(名物 ニッカリ青江重要美術品



○備前刀剣博物館
 ずっと気になっていましたが、やっと行くことができました。刀剣の販売がメインで販売しているものは手にとれる場所に置いてあります。10万ぐらいからあり、意外とお手頃価格だなと思いました。買うならこれという気にいったものは、45万ほどの拵つきの刀でした。高価なものなど販売していないものを展示しているようです。展示はメインではないので、見ずらい位置に置いてあったり、解説がないものもありますが、展示数は多かったです。2階では新選組関連の刀を展示していました。店内には大和守安定の刀がいろいろなところに展示されていて多かった気がします。
主な刀剣
・太刀 銘 正恒 重要刀剣
・太刀 銘 国安
・刀 無銘 則重
・刀 無銘 高綱
・脇差 無銘 福岡一文字 重要刀剣
・小太刀 銘 光忠
解説のほとんどが燭台切光忠についてで、隣の写真は生駒光忠だったのでバラバラすぎてちょっと笑ってしまいました。
・短刀 朱銘 行光 本阿弥長織花押
・脇差 銘 津田越前守助広 延宝七年二月日 重要刀剣
・脇差 大和守安定 (金象嵌)万治三年八月五日 弐つ胴切落
          (金象嵌)山野加右衛門尉永久    重要刀剣
・短刀 無銘 左 重要刀剣
・刀 無銘 次吉
              他多数



○後楽園・岡山城
 どちらも行くのは2回目ですが、他の三名園やお城をしっかり見た後では、受けるイメージが変わりました。
 後楽園はそこそこの広さにちょうど良い人出でした。平日だったのもあるのでしょうが、お庭の雰囲気を味わうにはちょうど良かったです。敷地内に田んぼや茶畑があって、妙に生活感があるなと感じました。兼六園はあまり広くないからかいつも人が多いですし、偕楽園はほぼ市民公園と梅林なので他の庭園とは雰囲気が違うと思います。
 岡山城は内部にエレベーターがあり、完全に博物館化していますが、お城の外観がとても好きです。記憶よりも大きくて立派でした。城内の展示量はあまり多くありません。今回行ったときには、企画展で戦国武将の甲冑を展示していました。月見櫓が公開中でしたが、上にあがる階段がとにかく急です。階段というより梯子でした。上は縁側のように張り出していて、昔のままの造りが見られてとてもよかったです。

○備中松山城
 特に予定はしていなかったのですが、月曜日で博物館がまったく開いていないこともあり、観光案内でみかけて行くことにしました。岡山駅から在来線で1時間で行けます。備中松山城は現存する天守があり、現存天守の中で、もっとも標高が高い場所にあります。天空の城として紹介されていて、運が良いと雲海も見られるそうです。今回は時期はちょうど良かったのですが、朝雨が降っていたため、雨が止んで晴れた午後に行きました。岡山駅からの電車の眺めもとても良いです。八合目までは車で行けますが、その先は山登りです。お城までは20分ぐらいですが、かなり足場が悪いので、天気が良いときに行って正解でした。とにかく登っている最中も眺めがよくて気持ちよかったです。天守の中は展示物は少ないですが、当時天守が重要な象徴としての存在だったこと、捨て置かれていたため荒れ果てていたこと、山の上にあるため修復作業がとても大変なことなどがよくわかりました。平成の修復作業については、詳細な映像で学ぶこともできたのでとてもわかりやすかったです。

○倉敷
 刀もゆかりの地としてもあまり関係ありませんが、岡山の観光地といったらはずせない倉敷の美観地区も行ってきました。瓦屋根などをみるのが大好きなので建物を見ているだけで楽しいです。今回は初めて川の船にも乗りました。ゆるい船頭のおじさんの話はおもしろかったです。備前焼も少し興味をもったのでお店に入ってみましたが、思ったより手頃な値段だったのでつい買ってしまいました。

○本興寺
 岡山から新幹線で新神戸まで行き、そこから尼崎まで行き本興寺に行ってきました。事前に調べたところあまり人が多くないとのことでしたが、私が行った夕方は比較的多いときだったのではないかなと思います。宝物殿は小さいですが中はきれいな建物でした。数珠丸が展示されている2階はとてもにぎわっていました。展示は刀が低い位置に置かれていたため、刃文が少し見づらかったのが残念です。手入れもしているというお坊さんの話を聞くことができたのですが、美術品ではなく宗祖の日蓮大聖人の持ち物としての展示なので茎は見せない展示方法だったそうです。最近いろいろな施設から貸出の問い合わせがあるそうですが、神聖なものとして取り扱っているためか、あまり展示に前向きではないようです。正直、展示の仕方で受ける印象が大きく変わるので、もっと良い施設で展示しているのも見たいなと思いました。刀以外の展示では、多くの著名な武将が奉納した禁制が置いてあり興味深かったです。
 お寺の敷地内ではお坊さんをたくさん見かけました。特別な日だからか、みなさんとても親切に声をかけてくださり、展示の説明や道案内をしていただきました。重要文化財の建物である方丈はとてもきれいな襖があり良かったです。お堂からお経をよんでいるのが聞こえてきましたが、聞きなれないお経で不思議なリズムでした。
主な刀剣
・太刀 銘 恒次(号 数珠丸重要文化財
・短刀 無銘(号 長一丸
こちらも日蓮大聖人が所持していたそうです。無銘ですが郷義弘の作ではないかとのこと。切っ先が冠落しだったのと少し長め(29.4cm)だったのでパッと見で脇指かと思いました。


《感想》
 岡山は刀剣関係で行きたい場所が多いのですが、今回月曜日をはさんでいたので、県立博物館や長船刀剣美術館には行けませんでした。林原美術館も刀剣の展示はしていないようだったので、ぜひ機会を見てまた近いうちに岡山の刀剣旅行をしたいです。
 今回の旅行でお城を3つ回ったのですが、調べていてあらためて四国は良いお城が多いなと感じました。今回初めての四国上陸だったので、ぜひ他の3県も行きたいと思います。


《今回の一振》
 今回はにっかり青江です。幅も広くて厚みもあって脇差とは思えない迫力がありました。茎の形や鎺、樋の入り方も好みで、刀剣乱舞に登場したキャラも実物をたくさん見てきましたが、かなり好きな刀だと感じました。銘はものによって銀象嵌銘に見えるものもありますが、きれいな金でした。
 数珠丸は備前作ではないかともいわれていますが、にっかりも倉敷刀剣美術館で見た青江派の刀も直刃の似た雰囲気を感じたのでやっぱり青江派かなと思いました。


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