熱海へ旅行することになったので、合わせて以前知って気になっていた湯河原の木村美術館へ行ってきました。今回はあまり時間がなかったので湯河原の他の施設はみることはできなかったのですが、他にも美術館がたくさんありました。

《行った場所》
○木村美術館
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 個人で運営している美術館で、相州刀美術館という名前でもあります。湯河原の土は鉄が含まれていて、海岸の砂浜も砂鉄を含んで黒くなっています。地名も鍛冶屋という地名で、昔は鍛冶職人がいたのではないかという話です。木村美術館のご主人は、昔からこの場所に住んでいて家に刀があったそうです。今回は奥さんとお話をすることができました。家にある刀をせっかくだから展示してみようということで、30年ほど前に美術館をつくったそうです。ただ、ご夫婦も高齢になり来る人も多くはないので美術館は基本的には閉館しています。町の観光案内マップにも、来館の際には事前に連絡をしてくださいとありました。ホームページやマップに載っている連絡先はご自宅の電話番号ですが、美術館に行くと見える場所に携帯電話の連絡先が書かれていて、そちらに連絡をしたほうが良いとのことです。
 展示室は外階段から入るのですが、ドアが銀行の大きな金庫のような扉で驚きました。展示については、湿度も管理されて手入れもされて良い状態でした。ただ、照明が少なかったり置き方の問題で見ずらいものもあります。展示替えをどの程度しているのかわかりませんが、展示されているもの以外にもたくさんあるそうです。手入れは毎年本阿弥家の方が来ているらしく、11月に磨いたばかりなので今の状態は良いと言っていました。解説はどなたが書かれたのかわかりませんが、今回お話をした奥さんはあまり刀には詳しくないそうです。ご主人が認知症になり代わりをしているようですが、足が悪く三階建ての美術館を経営するのは大変そうでした。とても優しい方でいろいろな話をしてくれました。ご夫婦共に高齢で職員としてご近所の方が来ているようですが、あまり美術館を長く続ける予定がないようで残念です。今まで博物館などで寄贈されて展示していたものは、同じような経緯があって預けられたのかなと思いました。


主な刀剣
・短刀 銘 源正家
 三島に住んでいた江戸時代の刀工だそうです。刃文が富士山と月に見立ててあり、まるで絵画のようになっています。
・脇指 銘 元近作
 小田原相州物とよばれる作者の作品で相州らしい姿の刀です。
・脇指 銘 相州住綱広
 三代綱広の作で、倶利伽羅龍の立派な彫刻があります。
・脇指 銘 相州伊勢大掾源綱広
 同じ綱広でもおそらく五代目の作品です。細身で刃文はおだやかで、上の刀と上下に置かれて展示してありましたがまったく違う印象でした。
・短刀 銘 綱家 重要刀剣
 綱家は北条家のお抱え刀工だったそうです。とても健全な姿で展示位置も良いのでとても輝いてみえました。
・脇指 銘 相州住秋広 貞治三年十二月日(号 日本一秋広神奈川県指定文化財
 黒田家伝来の刀で、拵えには黒田家の藤巴紋が散りばめられています。残念ながら刀身が手前に若干傾いて展示されていて、全体がかなり見ずらくなっていました。平造りで派手な彫り物などはなくシンプルな造りです。

・短刀 無銘 貞宗
 比較的刃文が華やかでどちらかというと正宗作のような印象です。手元にある図録の中では、佐野美術館の小松正宗が一番近い姿かなと思いました。鎺の丸に四つ目菱紋がきれいで、目釘穴が3つあり全体的に特徴的な姿をしています。
・脇指 銘 相州住綱広
 こちらは初代綱広の作で刃文はとても派手です。彫物は草の倶利伽羅がシンプルですがとてもきれいでした。
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・短刀 無銘 国光
 新籐五国光の作で、地鉄のきれいさがとてもわかります。刃文は細直刃でとても国光らしい刀だと思いました。伝来については何も書いてありませんが、鎺には葵の紋が彫られています。
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・刀 無銘 正宗(号 日月正宗
・刀 金象嵌銘 正宗(号 ひぐらし正宗
 ひぐらしの由来は、日ぐらし眺め続けても眺め飽きることがないという意味だそうです。こちらも展示位置が若干悪く照明があまり当たっていなかったのが残念です。しかし解説がかなり詳しく書いてあったので見どころがわかりやすくてよかったです。
・刀 無銘 伝国吉
 粟田口国吉の作とされる刀です。同じ刀の鳴狐とは違い鎬造りなので印象が全然違いますが、とてもきれいな細直刃です。
・短刀 銘 村匡
 刃紋が少しとがったフリルのようでとても華やかでした。
・脇指 銘 相州住綱広
 地鉄きれいで刃紋と彫刻の梵字のバランスが良くなかなか好みなだと思いました。
・脇指 銘 肥前國正廣
・脇指 銘 近江守忠吉
・刀 無銘 伝沼間藤源次助真

・刀 無銘 志津三郎兼氏 重要刀剣
 とてもきれいな直刃で、地鉄もきれいで相州伝に近いのがわかりました。とても健全な姿で鎺にはこちらも四つ目菱紋がみられます。
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《感想》
 照明や展示位置で少し見ずらいところがありますが、展示内容は良いものばかりだと思います。特に相州の刀が好きだととても楽しかったです。今回は展示をしていませんが、文化財登録された行光の短刀も所持しているようです。
あまり積極的に美術館の運営をする予定はないようですが、若い人が来るのはめずらしいということで歓迎していただいたので、ぜひ興味のある方は事前に連絡をして見に行ってほしいなと思います。美術館まわりの雰囲気もよかったのであの空気を味わうだけでも、非日常感があっていいと思いました。


《今回の一振》
 今回は日月正宗といわれる正宗の刀です。大磨上ですが全体的にバランスの良い刀だと思いました。中務正宗に似ている気がします。徳川家伝来ということで、黒漆の拵えも一緒に展示されていました。家康は実用的でシンプルな拵えを好んだという話がありますが、この拵えもまさにそういった装いでした。
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