三島の佐野美術館で始まった「名刀は語る-磨きの文化-」に行ってきました。合わせて行く場所を考えていたところ、行きたいと思っていた箱根神社が近かったので行ってきました。2日間限定の小夜左文字と愛染国俊を見るのに、土曜日でも行けそうだったのですがとても混雑しているということだったので日曜日に見てきました。


《行った場所》
○箱根神社
 箱根までは、新宿からの高速バスを利用しました。直接行ってくれるので便利なのですが、行楽シーズンということもあり高速道路の渋滞が長く、予定時間よりも一時間ほど時間がかかってしまいました。普段新幹線や電車を使っているのであまり考えていませんでしたが、バスは時間が読めないのが難点なので考慮する必要があります。
 山のホテルというバス停で降り、箱根神社までは歩いて行きます。宝物館は新しく、常設展では各地の博物館のような映像資料もありました。企画展では曽我物語について詳しく展示があり、物語の流れを読んでから展示物を見るとさらに楽しめました。
主な刀剣
・太刀 無銘 伝長船長円(号 微塵丸
 木曽義仲が箱根権現に奉納したもので、曽我物語の中では兄の十郎祐成が佩刀した刀です。かなり長くて80cmはありそうでした。(調べたところ100cmちかくあるそうですがそこまでの長さがあるとは思いませんでした)
 刀は寝かせて置いてあるため、刃文は見えませんが重ねは厚く樋も大きくはいっていてあまり平安ごろの古い刀には見えませんでした。反りはあるけれど、どちらかというと南北朝の作というほうがあってるような気がします。鎺近くには大きな刃こぼれがありました。

・太刀 無銘 伝三条宗近(号 薄緑丸
 源義経が奉納した刀で、曽我物語では弟の五郎時政が佩刀していました。仇討ちを果たした後は源頼朝から返納されたそうです。細身ですがかなり反りが小さく、こちらもあまり平安らしさは感じませんでした。微塵丸と並べて置いてあるので比べてみると同じような時代に造られた刀だとしても全然姿が違うのがわかります。ただどちらの刀も小峰なのですっとした尖った印象を受けました。刀を見るという目的では物足りない展示方法なのですが、壮大な逸話をもつ刀という展示としては十分楽しむことができました。


○佐野美術館
 箱根芦ノ湖から三島まではバスで行きました。途中三島大橋や山中城跡を通っていき、景色を見るだけでもなかなかおもしろいです。小田原や熱海行のバスは混んでいましたが、三島行はとても空いていました。
 三島で一泊して、佐野美術館は9時の開館ちょうどをめがけて行きました。だいたい館内に入るのに1時間半、小夜と愛染が展示されているブレストシーブのスペースまでで30分、その他の展示も列に並びながら見て1時間半といった感じでした。ブレストシーブのところは1分間だけだったので、見たことのない愛染国俊をじっくり見ようと思って他はあまり見られませんでした。それ以外の展示は、列の進みが遅かったのもありかなりじっくりと見ることができました。
 スタンプラリーが始まってからも行く予定ですが、前期と後期でほぼすべて展示替えになるためどれも真剣に見る必要があり大変でした。見た刀についてですが、多すぎてとても書ききれないほどなので文化財指定を受けているものだけ書き出します。それでもかなりの数があり、本当にすごい展示だというのがわかります。寄託のものは目録には名前も書いてありますが個人蔵としています。
 
主な刀剣
・短刀 銘 国俊(名物 愛染国俊重要文化財、㈱ブレストシーブ蔵
 初めてみるので、茎の愛染明王を探したのですがうまく見えませんでした。全体的にすらっとしていて、下にあった小夜が小さいため比べるととても長いように見えました。彫り物が刀身のわりに大きくて全体的に好みな姿です。
・短刀 銘 左(名物 小夜左文字重要文化財、㈱ブレストシーブ蔵
 今回は見られる時間が短かったので、去年中鉢美術館でじっくりと見られてよかったです。今回は愛染と並べての展示だったので、小ささが強調されていました。表面がなめらかでつるっとした印象です。

・太刀 銘 利恒 重要美術品
 展示は古い時代から順に置かれています。これは平安のものですが、備前らしい姿だなと思いました。鎌倉時代のよく見られる備前刀に近い気がします。銘が大きく古いものにしては読みやすく残っているのがよかったです。
・太刀 銘 行秀 重要文化財 個人蔵
 行秀も古備前の刀工ですが、こちらはあまり備前っぽくないなと思いました。備前の刀は作者によって受ける印象がかなり変わるのでおもしろいです。古備前の刀は見る機会が多くないので特に毎回新鮮に見えます。
・太刀 銘 国行 重要美術品 
 切っ先が太く力強い印象を受けました。来派の刀は特に地鉄が好みです。
・刀 無銘 当麻 重要美術品
・刀 無銘 正宗 重要文化財
 反りが強く、他の正宗から感じる大磨上の形跡をあまり感じない姿でした。峰も大峰ではなく少し控えめな印象です。刃文がポコポコっとふくらんでいるようすがいいなと思いました。照明の当たり方で沸がとてもよく見えました。
・太刀 銘 長光 重要美術品
 長光らしい姿で肌がとてもきれいです。刃文がよく見ると派手でそこもらしさを感じました。
・薙刀 銘 備前国長船住人長光造 国宝
 厚みがありとても重そうだと思いました。薙刀は展示があまりなかったり、展示位置が少し高めに置かれたりしていることが多く、刀と同じように見るのは意外と少ない気がします。
・太刀 銘 長元 重要文化財
 初めて見る刀工です。姿は平安ぽさを感じる細身で、刃文がちょこちょこっとはいっているのが上品だなと思いました。
・太刀 銘 真長 重要文化財、個人蔵
 鎬が低くてぱっと見平造りかと思うような姿で、磨り上げられてそうなアンバランスさを感じました。刃文はフリルのように華やかで、刀身にある梵字や剣の彫り物が好みです。鎺には本田家の家紋が入っていました。
・太刀 銘 国宗 重要美術品、個人蔵
 刃文がメラメラと燃えているようで、山鳥毛一文字のような印象を受けました。
・太刀 銘 雲生 重要美術品
 とても肌がきれいで、刃文も上品な直刃でよかったです。
・太刀 銘 俊次 重要美術品
・太刀 銘 為次 重要美術品
・太刀 銘 清綱 重要美術品
・脇指 銘 相模国住人広光 康安二年十月日(号 火車切重要美術品
 刃文の焼き幅が広くとても派手な印象です。あまり厚みがなく地鉄も正宗や貞宗とはちょっと違うなというのがわかりました。
・刀 金象嵌銘 備前国兼光 本阿弥(花押)(名物 大兼光) 重要文化財
 長くて幅も広いため、とても迫力がありました。刀は80cmを超えるとすごく大きいなという印象を受けます。刃文ものたれがとても派手な印象ですが、正宗などののたれの感じとはやっぱり違うなという感じです。
・刀 金象嵌銘 基光 重要美術品
 片落ち互の目がとてもわかりやすく、全体的にその刃文なのでトゲトゲしさを感じました。けれど肌がきれいで好みな姿です。
・刀 銘 津田越前守助広 延宝二年二月日 静岡県指定文化財、個人蔵

・短刀 無銘 貞宗(号 太鼓鐘貞宗重要文化財、個人蔵
・太刀 銘 景則 静岡県指定文化財、個人蔵
・大笹穂槍 銘 藤原正真作(号 蜻蛉切静岡県指定文化財、個人蔵
                  他多数


《感想》
 限定公開の2日目に行ったのでそこまで混乱もなく見ることができましたが、やはり館内はとても混んでいました。けれど全体的にじっくり見ることができて、講演も聞くことができたので大満足な展示でした。澤口さんの講演を聞くのは3度目でしたが、自分の刀を手に入れた後なので今までとは違い話す内容に同感することが多かったです。持ち主がいなくなり手入れがされないもったいない刀がなくなるために、若い人に刀の所持者になってほしいという考えがあることを、話を聞いていて感じました。まだ今は刀を実際に購入した人は少ないと思いますが、今興味を持っている人は本当にたくさんいると思うので、私が買ったようにこれから10年もしたら刀を持つ人がかなり増えているのではないかなと思います。


《今回の一振》
 今回はずっと見たかった太鼓鐘貞宗です。個人蔵で今までの展示の経歴からいったら佐野美術館で展示する可能性は高いだろうなと思っていましたが、こんなに早くみられるとは思っていませんでした。姿は貞宗らしさは薄く思っていた以上に小さかったです。肌はきれいで刃文ののたれが好みな感じでした。貞宗も正宗も銘がないため今まで真偽不明なものはたくさん見ましたがどれも魅力がある刀だと思います。実物ではなく図録でしか見ていない刀は所持者の来歴などを中心に見てしまいますが、実物を見るとその刀の造りを中心に図録を見られるようになる気がします。以前開催された「名物刀剣-宝物の日本刀-」の展示会の図録に太鼓鐘貞宗がのっていますが、実物を見る前と後で写真から感じられる印象がかなり変わった気がします。